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UN/CEFACTにおけるQualified Data Type(QDT)と対応コードリストの整理
2025-06-05
本記事では、UN/CEFACT(国連貿易円滑化および電子ビジネスセンター)が発行しているCore Component Library(CCL)において定義された Qualified Data Type(QDT) と、それに対応する コードリスト(Code List) について、整理・紹介します。 これらのデータ型は、電子インボイスや貿易文書の標準化において広く利用されており、欧州の電子インボイス標準規格CEN/EN 16931やPeppol BIS、JP PINT、そして中小企業共通EDIなどの国際・国内仕様にも採用されています。
1. JSON Schema NDR
UN/CEFACT NDR(Naming and Design Rules)は、データモデルやXMLスキーマの設計規則を指定する国際的な規範です。これには、データ要素の命名規則、複合型の設計、リレーションシップの定義などが含まれます。
NDRのJSON対応について、UN/CEFACTは最近、JSONデータモデルの標準化を推進しています。これにより、XML以外のフォーマットでデータを交換するニーズに対応し、特にWebサービスやAPI経由でのデータ交換を簡素化します。NDRは、JSONスキーマ(JSON Schema)にも適用可能であり、JSONデータモデルを定義する際の基準として使用されています。
UN/LOCODE(United Nations Code for Trade and Transport Locations)は、国際連合が管理する場所識別子の標準です。このコードは、貿易や輸送業務に関連する地理的な場所を一意に識別するために使用されます。UN/LOCODEは、国や地域、都市、港湾、空港などの各種場所に対して2文字の国コードと3文字の識別子を組み合わせて割り当てます。
JSONとの関係について、UN/LOCODEのデータは通常JSON形式でも利用可能です。JSON形式に変換されたUN/LOCODEデータは、Webサービスやアプリケーションで簡単に利用できるようになります。また、JSONを使用することで、UN/LOCODEのデータを他のデータソースやシステムと統合しやすくなります。これにより、国際的な物流や貿易のデータの管理と共有が効率化されます。
UN/LOCODEのJSONデータについての詳細や利用方法は、国際連合の公式ウェブサイトなどで確認できます。
2. QDTと対応コードリストの一覧
UN/CEFACT(国際連合経済社会理事会貿易業務手続調整委員会)は、国際的な標準化団体であり、電子ビジネスと貿易業務の効率化を目的としています。UN/CEFACTは、業界間でのデータ交換と相互運用性を促進するために、さまざまな業界標準や規範を開発しています。
UN/CEFACT Web Vocabularyは、このような標準や規範の中で使用される用語集です。この用語集は、業界特有の用語や定義を統一し、異なるシステムやプロセス間での理解を深めるために設計されています。具体的には、電子ビジネスの文書交換、データモデリング、およびXMLスキーマならびにJSONスキーマの開発において、共通の言語や概念を提供します。
UN/CEFACT Web Vocabularyは、標準化されたコミュニケーションとデータ交換を支援する重要なツールとなっています。
以下の表は、QDT名称・対応するコードリスト・公開URLを一覧形式で示したものです。
Qualified Data Type 名称 | コードリスト名称 |
---|---|
Invoice_ Document_ Code. Type |
Invoice Document Code List |
Message Function_ Code. Type |
Message Function Code List |
Date Mandatory_ Date Time. Type |
Date Time Period Function Code List |
Document_ Code. Type |
Document Code List |
Currency_ Code. Type |
Currency Code List |
Payment Means_ Code. Type |
Payment Means Code List |
Tax Type_ Code. Type |
Tax Type Code List |
Tax Category_ Code. Type |
Tax Category Code List |
Financial_ Adjustment Reason_ Code. Type |
Adjustment Reason Code List |
Accounting Debit Credit_ Status_ Code. Type |
Status Description Code Accounting Debit Credit |
Allowance Charge Reason_ Code. Type |
Allowance Charge Reason Code List |
Accounting Account Type_ Code. Type |
Financial Account Type Code List |
3. CCLとQDTの関係
UN/CEFACTのCore Component Library(CCL)は、ビジネスデータの意味的定義を提供するコンポーネントライブラリです。
この中で定義された Data Type の一部には、コード値を使って意味を限定した Qualified Data Type(QDT) が含まれます。
QDTは、特定の業務文脈における意味を持つデータ型であり、Value Domain(値域)としてUN/CEFACTのコードリストを参照しています。
4. 利用例
QDTとそのコードリストは、以下のような用途で利用されます:
-
電子インボイス(例:Document Code → 380: Commercial Invoice)
-
税区分や税種別の指定(例:Tax Category Code、Tax Type Code)
-
支払手段の明確化(例:Payment Means Code)
-
財務データの借方・貸方区分(例:Accounting Debit Credit Status Code)
5. Accounting Debit Credit Status Code 詳細解説
以下は、Status Description Code_Accounting Debit Credit(会計借方・貸方状態コード)の各値に関する詳細解説です。
コード | 英語名 | 日本語訳 | 説明(詳細) |
---|---|---|---|
29 |
The object has a status of debit. |
当該項目は借方の状態を示します。 |
当該項目は借方の状態を示します。取引の結果として資産の増加や費用の発生を示す際に用いられます。 |
30 |
The object has a status of credit. |
当該項目は貸方の状態を示します。 |
当該項目は貸方の状態を示します。負債の増加、収益の発生、または資産の減少などを記録する際に使用されます。 |
31 |
The object has a status of positive debit. |
借方であり、金額が正(プラス)であることを明示します。 |
借方であり、金額が正(プラス)であることを明示します。会計帳簿上、通常の借方処理を行う場面で使います。 |
32 |
The object has a status of negative debit. |
借方でありながら金額が負(マイナス)である状態。 |
借方でありながら金額が負(マイナス)である状態。通常の借方仕訳が取消・訂正されたことを示す場合に使用されます。 |
33 |
The object has a status of positive credit. |
貸方であり、金額が正(プラス)である状態。 |
貸方であり、金額が正(プラス)である状態。通常の貸方仕訳を表す際に使います。 |
34 |
The object has a status of negative credit. |
貸方でありながら金額が負(マイナス)である状態。 |
貸方でありながら金額が負(マイナス)である状態。貸方処理の取消や逆仕訳として用いられます。 |
66 |
The status of the amount is unsigned. |
金額に符号(借方・貸方)が明示されていない状態を示します。 |
金額に符号(借方・貸方)が明示されていない状態を示します。前後の文脈や勘定科目の性質により解釈される必要があります。 |
6. おわりに
UN/CEFACTが提供するQDTとコードリストは、グローバルな業務標準の共通言語として活用されており、
その整合性は電子取引の自動処理性や相互運用性の確保において極めて重要です。
CCLやQDTの詳細は、UN/CEFACT Vocabulary Portal(https://vocabulary.uncefact.org[])を通じて誰でも参照可能です。
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