5コーナーモデルによるViDAとCTC・eB2B領域への展開

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1. はじめに

欧州連合(EU)では、税務デジタル化を加速させるため、「VAT in the Digital Age(ViDA)」構想が進められています。
この動きの中で、B2B電子取引(eB2B)とCTC(Continuous Transaction Controls)/デジタルレポーティング(DRR)要件を同時にカバーする枠組みとして、”5corner model for ViDA and CTC•eB2B Domain”が提案されています。

この5コーナーモデルは、既存のOpenPeppolネットワークに新たな「第5コーナー」(税務当局向けコーナー)を追加することで、分散型(decentralized)かつ将来拡張可能(future-proof)な取引・レポーティング基盤を目指しています。

2. PeppolとViDAの関係

Peppolは、公共調達(eProcurement)向けのB2B/B2G電子取引ネットワークとして発展してきましたが、近年では民間取引(B2B)にも拡大しています。
ViDA構想においては、域内取引(intra-EU trade)における電子インボイス義務化と標準化されたデジタルレポーティングが求められていますが、OpenPeppolはこの要件に最適な基盤と認識されています。

具体的には、以下の役割を果たします。

  • EN 16931(EU標準電子インボイス仕様)に準拠するBIS Billing 3.0をベースに、共通フォーマットを提供

  • SMP/SML、BDXL、NAPTR等の技術により、相手先の自動検出・ルーティングを実現

  • 4コーナーモデルを拡張し、税務当局向け「第5コーナー(Fifth Corner)」を設置することでCTC/DRR要件に対応

これにより、Peppolは単なるB2Bネットワークではなく、ViDA下でのEU統一デジタル取引・レポーティング基盤へと進化しつつあります。

3. 5コーナーモデルの概要

5コーナーモデルは、以下の要素から構成されています。

  • 送信事業者(エンドユーザー)

  • 送信AP(アクセスポイントプロバイダー)

  • 受信AP(アクセスポイントプロバイダー)

  • 受信事業者(エンドユーザー)

  • 税務当局ノード(Fifth Corner)(CTCレポーティング先)

従来の4コーナーモデルに、CTC対応のためのFifth Cornerを追加することで、取引データと税務データの双方を安全・効率的に流通させます。
中央集権的なプラットフォームに依存せず、各事業者や国の多様性を尊重した分散型アーキテクチャを実現します。

4. EUにおける状況

4.1. 既存EDIの統一が先決課題

CTC・DRR体制の導入にあたり、EUでは「既存EDIの乱立」を統一することが喫緊の課題となっています。
各国・各業界で異なるEDI仕様(EDIFACTベース、国独自XML、紙PDFベース等)が並存しており、これを放置したままCTC要件を満たすことは困難です。

そのため、EN 16931に基づくPeppol BIS Billing 3.0への統一が推進されており、5コーナーモデルはこの統一化を促進する役割も担っています。

CTCとは単なる税務レポート義務ではなく、電子取引基盤そのものの標準化・近代化プロジェクトである点が極めて重要です。

4.2. Peppol ViDA Pilotの概要

この流れを受け、OpenPeppolは「Peppol ViDA Pilot」プロジェクトを開始し、以下を目的としています。

  • EN 16931準拠のPeppol仕様がViDA要件を満たすことを実証

  • EU加盟国、EEA諸国、英国、その他法域の参加促進

  • 認定サービスプロバイダーや企業による実装テスト機会の提供

詳細は以下公式ページを参照。
https://peppol.org/peppol-vida-pilot/
プロジェクト概要資料(Concept Paper)は次を参照。
https://peppol.org/wp-content/uploads/2025/03/Peppol-ViDA-Pilot-Concept-Paper-v1.pdf

4.3. EU加盟国の取り組み状況

各国のCTC・デジタルレポーティング導入予定は以下の通りです。
(注:以下の状況はChatGPTの回答であり、内容は未確認です。)

  • フランス(FR):2026年より、B2B eインボイス・電子レポート義務化

  • ポーランド(PL):2024年7月よりKSeF全国展開

  • イタリア(IT):FatturaPAによる国内B2B/B2G電子インボイス義務化済み

  • ドイツ(DE):2025年にB2B eインボイス義務化予定

  • ベルギー(BE)、スペイン(ES)、ルーマニア(RO)も導入準備中

これらにより、Peppolを基盤としたEU全域での税務デジタル化が急速に進展しています。

5. 日本における課題

EUに比べ、日本ではG2B領域におけるOpenPeppol利用が義務化されておらず、導入には以下の課題があります。

  • 特に中小企業および税理士による導入への抵抗感

  • 大企業でも、既存受発注・請求システムとの統合コストへの懸念

  • GビズIDやe-Tax等、政府インフラとの統合方針が未整備

これらを克服するためには、まずは大手企業グループや公共調達領域での段階的導入、パイロットプロジェクト実施による実績作りが鍵となります。

6. おわりに

“5corner model for ViDA and CTC•eB2B Domain”は、単なる税務対応を超え、B2B電子取引基盤そのものを近代化・標準化するための重要なステップです。

日本でも、税制デジタル化、電子帳簿保存法、インボイス制度改革に合わせ、OpenPeppolベースの分散型・オープンな取引・レポーティング基盤の整備を進めるべきタイミングに来ています。


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