フィンランドにおけるPeppol導入状況:電子インボイスから商取引・物流までの拡大

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Peppol(Pan-European Public Procurement On-Line)ペポルは、電子調達および電子商取引の標準化を推進する国際的なプロジェクトです。フィンランドでは、電子インボイスの義務化とともに、Peppolの導入と普及が積極的に進められています。特に、Post Award機能であるAdvanced OrderingやPeppol Logisticsの活用が注目されています。フィンランドにおけるPeppol標準の導入は、国家財務省がPeppol Authorityとして中心的な役割を果たし、電子インボイスに限らず、注文処理や物流プロセスの電子化を推進しています。これにより、Peppol Advanced OrderingやPeppol Logisticsを通じた効率的な取引プロセスが実現されています。

1. フィンランドのPeppol導入状況

1.1. Peppol Authorityの設立

フィンランド国家財務省(Valtiokonttori)は、2022年にフィンランドのPeppol Authorityとして正式に認定されました。同省はフィンランド国内におけるPeppolネットワークの推進と運用を担当しています。

1.2. Peppol Authorityの役割

フィンランドのPeppol Authorityである国家財務省の主な役割:

  • フィンランド国内でのPeppolネットワークの利用促進と関係者間の協力を調整

  • フィンランド国内で活動するPeppolサービスプロバイダーの支援と監督

  • 国内法の発展状況の監視

  • トレーニングの調整と能力向上

  • 国際的なPeppolネットワークの開発への参加と影響力の提供

1.3. 中央政府でのAdvanced Ordering導入

Peppolネットワークにおける注文プロセスの詳細:
参照:
https://www.valtiokonttori.fi/en/getting-to-know-peppol-part-2-order-processes-in-the-peppol-network/
OrderProcess

フィンランド政府では、Peppolを利用して注文プロセスを標準化し、効率化する取り組みを推進しています。特に公共調達において、Peppol Advanced Orderingの利用が推奨されています。

このプロセスは以下のトランザクションを対象としています:
2024年11月時点でのPeppol BIS version 3は、次のページです。
参照:
https://docs.peppol.eu/poacc/upgrade-3/
BIS

Advanced Orderingは、発注から受領までのプロセスを電子的に標準化することを目的としています。

各トランザクションは、フィンランド政府の調達プロセスに適用されるように設計されています。Peppolネットワークを利用することで、効率化と透明性の向上が期待されています。

1.4. Peppol Logistics

Peppol Logisticsは、物流のトランザクションを標準化し、効率的なデータ交換を実現することを目的としています。

2023年1月にOffshore NorgeとBEAstの提案により開始され、OpenPeppol Managing Committeeの承認を受けて展開されています。

フィンランドでもこの取り組みが試行されており、出荷通知や受領通知を含む標準トランザクションの利用により、物流プロセス全体の効率化と透明性の向上が期待されています。また、フィンランドのPeppol Authorityは、サービスプロバイダーやエンドユーザーが協力するフォーラムを提供し、物流分野でのPeppolの利用を促進しています。

Peppol Logisticsは、物流分野におけるデータ交換の効率化と標準化を目指すプロジェクトです。特に次のトランザクション仕様が策定されています:

  • 出荷通知 Advanced Despatch Advice Only 1.2

  • 出荷通知および受領通知 Advanced Despatch Advice with Receipt Advice 1.0

  • 重量明細書 Weight Statement 1.2

  • 輸送実行計画 Transport Execution Plan with Request 1.0

  • Transport Execution Plan Only 1.0

  • 運送状 Waybill 1.0

  • 輸送状況 Transportation Status with Request 1.0

  • Transportation Status Only 1.0

2. 日本におけるPeppol導入の提案

2.1. 概要

フィンランドの事例から学べるように、日本でもPeppolネットワークを活用した電子調達や電子インボイスの普及を推進することが望まれます。特に政府調達を率先垂範の事例とし、中小企業にも使えるデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援が求められています。

日本においては、2023年10月に適格請求書保存方式(インボイス制度)が開始されました。この制度は、消費税の適正な計算と納付を確保することを目的としていますが、中小企業にとっては適格請求書に対応するためのシステム導入やコストの負担が課題となっています。

また、日本政府はデジタル庁を中心に、Peppolを利用した電子インボイスの普及を推進しているものの、その利用範囲は主に適格請求書に限定される傾向があります。

2.2. フィンランドの事例から学べること

フィンランドでは、Peppolネットワークを通じて電子インボイスだけでなく、発注や物流に関するプロセスも標準化され、効率的に運用されています。特に政府がPeppolの利用を推奨し、標準化されたプロセスを適用することで、公共部門だけでなく民間企業にも広く利用が促進されています。

日本においても、以下のような取り組みを推奨します:

  • 政府調達におけるPeppol標準の利用をさらに拡大すること。

  • 中小企業に対するPeppolの利用支援策を整備すること。

  • 適格請求書に限定せず、発注・物流・受領といった幅広いプロセスに対応すること。

  • Peppolを利用した標準化プロセスの導入を、政府調達を通じたモデルケースとして示すこと。

日本でもフィンランドの成功事例を参考にしながら、Peppolの導入を政府主導で推進することで、公共部門だけでなく民間部門にも恩恵をもたらすことができるでしょう。特に中小企業への支援を強化することで、DXの普及を加速することが期待されます。


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