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PINT 仕様調整ガイド
2021年から標準仕様とは何かの文書化が不可欠と言ってきたのですが、ようやくPINTの仕様が公開されました。
『JP PINT 1.1.0変更内容』の記事もお読みください。税込み価額への仕様調整方法を紹介しています。
Peppol International (PINT) モデルは、国際的なデジタルインボイスの相互運用性を確保するためのフレームワークです。このガイドは、PINT インボイス仕様を各国の法的要件や業界のニーズに合わせて仕様調整する方法を説明しています。
1. はじめに
PINT の開発は、EU 域外の国々、特に VAT(付加価値税)制度を持たない国々におけるデジタルインボイスの課題に対処するために開始されました。例えば、シンガポールが最初の非 EU の PEPPOL Authority として参加した際、既存の PEPPOL BIS Billing 3.0 仕様が適用しづらい状況が生じました。これは、EN16931 が EU の VAT 指令に基づいて設計されているためです。このような背景から、PEPPOL ネットワーク全体での相互運用性を維持しつつ、各国の法的環境に適合するインボイスモデルの必要性が高まりました。
2. アーキテクチャ
PINT データモデルは、以下の3つの主要コンポーネントで構成されています。
2.1. 共有コンテンツ(Shared)
すべてのインボイスドメインで共通して使用される要素で、基本的な自動処理を可能にします。例えば、インボイスのメタデータ、取引当事者、合計金額、商品や価格、参照情報などが含まれます。
2.2. 調整可能なコンテンツ(Aligned)
一般的な定義がされており、各インボイスドメインで仕様調整が可能な要素です。受領者は一般的な理解は可能ですが、自動処理には追加の仕様調整が必要です。例えば、税情報や支払い指示などが該当します。
2.3. 独自コンテンツ(Distinct)
特定のインボイスドメインでのみ必要とされる要素で、国や業界固有の法的要件や慣行に対応します。これらの要素は国際的なインボイスモデルには含まれず、他のドメインでは必ずしも理解されない可能性があります。
3. データモデルの仕様調整
PINT の仕様調整は、各国の法的要件や業界のニーズに対応するために行われます。仕様調整の際には、以下の点が考慮されます。
3.1. 許可される調整
共有ビジネス用語のカーディナリティ(出現回数)の調整や、独自コンテンツの追加が可能です。ただし、国際的なインボイスモデル自体は変更されません。
3.2. 独自コンテンツの追加
各ドメイン固有の要件に対応するため、独自のビジネス用語やルールを追加できます。これにより、特定の法的要件や業界の慣行に適合したインボイス仕様が作成されます。
4. 仕様調整の手順
PINT の仕様調整を行う際の一般的な手順は以下の通りです。
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受信能力の確立: 新しい管轄区域での受信能力を確立します。
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送信能力の確立: 送信能力を確立し、相互運用性を確保します。
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仕様のローカライズ: 現地の法的要件や業界のニーズに合わせて仕様を調整します。
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調整の適用: 共有コンテンツや調整可能なコンテンツのカーディナリティを適切に設定します。
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独自コンテンツの追加: 必要に応じて、独自のビジネス用語やルールを追加します。
5. 結論
PINT 仕様調整ガイドは、各国や地域の特定の要件に対応するためのフレームワークを提供します。これにより、PEPPOL ネットワーク内でのデジタルインボイスの相互運用性が強化され、国際的なビジネスプロセスの効率化が期待できます。
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