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先日公開されたJP PINT 0.9.3をこのEUのコンプライアンス基準に照らしてどの水準にあるか評価してみます。

JP PINTは外税で記載された適格請求書をデジタルインボイスで表現することを目的としており、内税で記載された適格請求書や適格簡易請求書を対象としていないという課題が残っていますが、そのほかの背景の違いもあります。

下記の翻訳中にある欧州指令2014/55は、「公共調達におけるデジタルインボイスについての指令」です。欧州統一市場の実現に向けたCEF(Connected Europe Facility)プロジェクトの背景となっている指令です。欧州やシンガポールやオーストラリアのOpen Peppolの導入も公共調達が大きな推進の背景となってきました。

eInvoicingは、CEF(Connected Europe Facility)プロジェクトが提供するBuilding Blockの一つです。
eInvoiceは、EN 16931に準拠すること(compliance コンプライアンス基準)が求められており、その要件を次のページで規定しています。

EN 16931 compliance

https://ec.europa.eu/digital-building-blocks/wikis/display/DIGITAL/EN+16931+compliance

このページの内容を次に翻訳紹介します。

3つのレベルのコンプライアンス

eInvoicing標準のパート1のセクション4.4は、コンプライアンス基準を詳細に指定していますが、以下は簡単な紹介です。
欧州のeInvoicing標準では、コンプライアンスを3つのレベルで定義し、各当事者がすべてのレベルに準拠する必要があると規定しています。 つまり、準拠当事者は、準拠請求書仕様の要件を満たす請求書のサポートを実装している必要があります。

デジタルインボイス文書

作成および送信されるデジタルインボイスは、コアインボイスまたはそれが基づくCIUS(Core invoice usage specification)が規定しているすべてのルールに準拠していること。
これには次のものが含まれる。

  • すべての必須情報が含まれていること
  • デジタルインボイスに関連する情報は、指定されたとおりに構成されていること
  • 金額は指定どおりに計算された値であること
  • デジタルインボイスの要素には、(ISOコードや国連コードなどの)許可された値だけが記載されていること

実装

デジタルインボイスの標準に準拠している受信者は、それらのデジタルインボイスがヨーロッパのeInvoicing標準コアインボイスデータモデルまたはCIUS(Core invoice usage specification)に準拠している場合、彼に送信されるすべてのデジタルインボイスを受け入れて処理する必要がある。 これは、送信者がコアインボイスまたは関連するCIUS(Core invoice usage specification)で許可されているオプションの情報を使用している場合に、受信者が(何らかの方法で)標準で定義されているようにその情報を処理し受信を拒否しないことを確認できることを意味する。

デジタルインボイスの標準に準拠している送信者は、ヨーロッパのeInvoicing標準またはCIUS(Core invoice usage specification)に準拠したデジタルインボイスを作成できる。

特定の送信者または受信者が使用しなければならない、または使用を許可されているCIUS(Core invoice usage specification)は、指令2014/55の合法的な採用を通じて、事業者が登録されているEU加盟国によって制限される場合がある。 このような制限に関する情報は、関連する国内法に記載されているが、国別プロファイルに概要が記載されている場合がある。

仕様

デジタルインボイスとその実装がCIUS(Core invoice usage specification)に基づいている場合、そのCIUS(Core invoice usage specification)はEN16931パート1のセクション4.4.2に記載されている基準を満たさなければならない。本質的に、これらの基準では、CIUS(Core invoice usage specification)がコアインボイスのサブセットであり、コアインボイスのルールに違反していないことが必要である。つまり、完全なコアインボイスを受信できる事業者は誰でも、準拠しているCIUS(Core invoice usage specification)を受信して​​正しく処理することもできる。

逆には適用されないことに注意。実際には、特定のCIUS(Core invoice usage specification)のみを受信できる受信者は、受信者がサポートするCIUS(Core invoice usage specification)から制限されているオプションを使用する場合、コアインボイスまたは別のCIUS(Core invoice usage specification)に準拠する請求書を受信して​​処理できない場合がある。実装者は、狭い範囲のCIUS(Core invoice usage specification)の仕様を使用してENに準拠することを避け、特定の目的でそのようなCIUS(Core invoice usage specification)を使用する場合は、範囲が広い完全なコアインボイスまたはCIUS(Core invoice usage specification)のサポートも実装することを推奨する。公開されているCIUS(Core invoice usage specification)仕様については、CIUS(Core invoice usage specification)のeInvoicingコミュニティ主導のレジストリを参照。

その他のデジタルインボイスの仕様

公的機関は、指令2014/55により、欧州のeInvoicing標準に準拠したデジタルインボイスを受信して処理できるようにする必要がある。
この要件は、特定の売り手が使用している形式のデジタルインボイスなど、他の仕様に基づくデジタルインボイスの受信には適用されない。
売り手が他の仕様に基づいたデジタルインボイスを提供する場合、他の契約または法的条項が適用されない限り、公的機関はそれに対処する方法を自由に選択できる。
また、指令2014/55では、公的機関がeInvoicing標準に準拠したデジタルインボイスのみを受け取ることができるようにする必要はない。
公的機関は、特定の目的でデジタルインボイスを受け取るために既存の実装を引き続き使用するか、eInvoicing標準に準拠するものと一緒に新しい実装を実装することも出来る。

JP PINT 0.9.3は、EN 16931 compliantか?

JP PINTは外税で記載された適格請求書をデジタルインボイスで表現することを目的としており、内税で記載された適格請求書や適格簡易請求書を対象としていないという課題が残っていますが、そのほかの背景の違いもあります。指令2014/55は、「公共調達におけるデジタルインボイスについての指令」です。欧州統一市場の実現に向けたCEFプロジェクトの背景となっている指令です。欧州やシンガポールやオーストラリアのOpen Peppolの導入も公共調達が大きな推進の背景となってきました。

Open Peppol International (PINT) Invoiceは、EN 16931-1に依存しない国際仕様を目指しているため、EUで要請されている条件の一部しか要求していません。

  • すべての必須情報が含まれていること
  • デジタルインボイスに関連する情報は、指定されたとおりに構成されていること
  • 金額は指定どおりに計算された値であること
  • デジタルインボイスの要素には、(ISOコードや国連コードなどの)許可された値だけが記載されていること

BIS Billing 3.0で提供されていたコアインボイスモデルで定義されていないUBLのXML要素が存在したときのエラー報告がなくなっています。
また、明細行の金額が基準数量や基準金額から計算した値に追加請求を加えて返金金額を差し引いた額かというチェックや税率ごとの課税対象金額が税率別の明細行の金額を合計した金額かというチェックルールがサポートされていませんので、税額計算のチェックはあるものの「金額は指定どおりに計算された値であること」は、保証されていません。

参考情報

上記に伴う違いや課題については次の記事をご覧ください。
OPEN PEPPOLのVALIDATION BIS BILLING 3.0とJP PINT 0.9.Xの違い
JP PINT 0.9.2で提供される検算ルールでCOMPLIANTになりますか
明細行の金額合計と課税分類毎の課税基準額のルール
デジタルインボイスのC2での妥当性検証(PINT COMPLIANT)

CEFについては、JETROの資料を確認してください。
その他の関連資料は、次のページを確認してください。
GitHub 参照