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データ連携基盤と商取引&会計のDX
Ouranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム)についてその詳細はこれからだと思いますが、先行事例としてのCEF eInvoiceのひとつであるOpen Peppolおよび、データ連携基盤Gaia-X,
Catena-Xについてその概要と課題を紹介します。
欧州ではすでにeIDAS[1]が進展していますが、残念ながら日本ではこれに該当するサービスの前提条件に手が付けられていません。2023年10月以降の適格請求書に対応するためeInvoiceのひとつであるペポルが開始しましたが、その前提となるCEF[2]のBuilding blockを用いたeIDAS(Electronic Identification, Authentication
and Trust Services)に該当するデジタル化は未着手です。eIDASについては、文末の「9. eIDASとは」を参照してください。
株式会社ITリサーチ・アートの高橋さんの記事『eIDAS規則における保証レベルやモバイルeIDプロセス-ENISA「eIDAS
compliant eID Solutions」を読む』もご確認ください。
商取引&会計のDX前提条件をクリアしている欧州と同じスタート地点にたっていないのに、それを無視していきなり「データ連携」では、かえって遅れてしまうのではと思います。
経済産業省では、関係省庁や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに、運用及び管理を行う者が異なる複数の情報処理システムの連携の仕組みに関して、アーキテクチャの設計、研究開発・実証、社会実装・普及の取組を進めております。
「Ouranos
Ecosystem(ウラノス・エコシステム)」は、Society5.0⦅サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(物理空間)を高度に融合することで経済発展と社会的課題の解決と産業発展を両立する人間中心の社会⦆の実現というビジョンに共感した方々とともに、こうした取組を通じて、その実現を目指す、一連のイニシアティブです。
経済産業省

Ouranos Ecosystemが参考にしているデータ連携基盤Gaia-Xはデータインフラストラクチャとデータ主権に重点を置いており、PeppolのようなKYC[3]検証レベルを直接提供していないという課題があります。Catena-Xのように業界の企業系列を前提としたフレームワークは、取引先が多岐にわたる中小企業や流通業への適用には、課題が多いと思います。
NEDOプロジェクトにおいて株式会社NTTデータグループが担当する
「データ連携基盤の構築と業界横断的なデータ流通の実用性検証並びに国際連携に関する研究開発」
に記載された「ユーザ認証システム」では、本記事で紹介するCEFのeIDやeSignatureも視野に入れて、中小企業や個人事業主も対象とする企業IDの基盤を国がIDの発行と資料環境も含めて無償で提供する「ユーザ認証基盤」の提案を期待します。モノや場所の前に個人や法人といった主語が確立しないとDXは実現できません。うわべをなぞるだけにとどまらず、背景となった考えを踏まえて、日本で商取引&経理のDXを実現する施策につなげていただきたいと思います。
また、ESG報告書などの企業報告においては、会計データとともに物理データを監査に耐えられる精度と形式で保存して報告につなげることが重要な課題です。ISO/TC 295 監査データサービス(Audit data
services)では、こうした課題に対応するための研究会を立ち上げることを2023年12月の第4回全体会議で決定しました。
1. Gaia-X対Peppol:デジタルトランザクションにおけるそれぞれの役割の理解
PeppolとGaia-Xは、デジタル取引の分野においてそれぞれ異なる役割を果たしています。このブログ記事では、トランザクション管理とユーザー確認におけるそれぞれの違いを詳しく探ります。
2. Peppol:トランザクション指向のアプローチ
Peppolは、信頼性の高いトランザクション管理を提供するシステムとして知られています。このシステムは、特に公共調達やビジネス間取引(B2B)で広く利用されており、取引の透明性と効率性を向上させています。Peppolの最大の特徴は、プロバイダーによるユーザーの検証(KYC)を通じて、取引パートナーの信頼性を保証することです。これにより、取引の安全性が確保され、不正行為のリスクが軽減されます。さらに、Peppolは国際的な標準に基づいており、異なる国やシステム間での取引を容易にします。
3. Gaia-X:データインフラストラクチャに焦点
一方、Gaia-Xはデータインフラストラクチャとデータ主権に重点を置いています。Gaia-Xの目的は、データの流通と利用を支配する新しいヨーロッパ基準を設立することにあります。このプロジェクトは、特にデータの自己主権、透明性、セキュリティ、相互運用性に焦点を当てています。Gaia-Xでは、参加者が自らのデータに関する完全な制御を保持することができ、これにより、データの安全性とプライバシーが強化されます。ただし、Gaia-Xは自己登録システムを採用しており、これはPeppolのようなKYC検証レベルを直接提供していません。そのため、Gaia-XはPeppolのような取引パートナーの検証レベルを達成するためには、追加のメカニズムが必要です。
4. EDIからGaia-Xへの移行
現在、従来のEDIシステムからGaia-Xへの移行プロジェクトは特にありません。Gaia-Xのデータ中心のアプローチは、EDIのようなトランザクションサービスを置き換えるために特別に設計されていません。組織がこのような移行を考慮する場合、Gaia-Xのデータサービスと既存のトランザクションワークフローを統合するためのカスタム統合や新しいインターフェース、アプリケーションの開発が必要になります。
5. Gaia-Xで商取引サービスを提供するには
Gaia-Xで商取引サービスを提供する際の潜在的な問題点と、それに対する追加機能の提案をより詳細に述べます。
問題点:
Gaia-Xの自己登録システムでは、取引相手の身元や信頼性を確認するためのKYCプロセスが不足しています。これは、特に商取引において重要なセキュリティリスクとなります。取引相手が提供する情報の正確性や信頼性が不確かであれば、詐欺や不正行為のリスクが高まることになります。
対策:強化されたユーザー検証システム
Gaia-Xの信頼性を高めるために、より厳格なユーザー検証システムの導入を検討する必要があります。これには、本人確認書類の提出、信用情報の確認、サードパーティ認証機関による検証プロセスなどが含まれます。これにより、取引の透明性と安全性が向上します。
問題点:
商取引においては、機密性が高い情報が頻繁にやり取りされます。Gaia-Xでは、これらの情報を適切に保護するためのセキュリティ対策が不可欠です。データ漏洩や不正アクセスは、企業の評判や信頼性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
対策:強化されたデータ保護機能
Gaia-Xは、データ保護を強化するために、セキュリティプロトコルの強化、データの暗号化、アクセス管理の厳格化などを行う必要があります。また、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを検出し、対応するための監査トレイルやアクセスログの詳細化も重要です。これらの措置により、取引データの安全性とプライバシーが保たれます。
現時点でのGaia-Xの対応レベルについては、Gaia-Xが主にデータインフラストラクチャと主権に重点を置いていることから、KYCプロセスや取引の信頼性に関する具体的な対応策は限定的です。セキュリティとデータ保護に関しては、Gaia-Xは強固なデータセキュリティ基準とプライバシー保護の構築に取り組んでいますが、商取引特有の課題への直接的な対応は、Gaia-Xの現在の主な焦点ではありません。
Gaia-XのKYCの問題に対処するため、Gaia-X Association AISBLがGaia-X内での利用者のKYCに関連する役割を担っています。
その役割、確認内容および確認の仕組みについては、文末の「10. 利用者のKYCとGaia-X Association
AISBLの役割」を参照してください。
6. CEFとGaia-X:欧州における商取引の電子化と統一市場の実現
欧州では、CEF(Connecting Europe
Facility)とGaia-Xという二つのイニシアチブが、商取引の電子化を通じて統一市場の実現に貢献しています。これらは異なるアプローチと提供するサービスによって、市場統合を支えています。
6.1. CEF:基盤となるBuilding Blocks
CEFは、デジタルサービスインフラ(DSI)を提供する一連のBuilding
Blocksを通じて、国境を越えたデジタル公共サービスの提供を容易にします。これには、eID、eDelivery、eInvoicingなどのサービスが含まれ、異なる国々のシステム間の互換性と連携を促進します。
CEFでは、以下のような重要なBuilding Blocksを提供しています。
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eID: 電子身分証明サービス。異なる国々の間でのオンライン身分証明と認証を可能にします。
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eDelivery: 安全なデータ交換を可能にするデジタル配信サービス。異なる組織間で信頼性の高いデータ転送を実現します。
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eInvoicing: 電子請求書の標準化をサポートし、企業間の請求処理を簡素化します。
これらのサービスにより、異なる国々や組織間でのデジタル取引が容易になります。
6.2. CEFの業務対象
CEFは、主に国境を越えた公共サービスのデジタル化に焦点を当てています。これには、オンライン認証、データ交換、電子請求書処理などが含まれます。CEFのBuilding
Blocksは、これらのプロセスを簡素化し、標準化することで、国際的なデジタル取引の効率化を図っています。
6.3. Gaia-X:データ主権とインフラ
一方、Gaia-Xはデータ主権とデータインフラストラクチャに重点を置き、クラウドサービスとデータストレージの分野でのセキュリティと透明性の強化を目指しています。これにより、ビジネスデータの流通と活用が安全に行われることを目指します。
Gaia-Xでは、以下の機能サービスが提供されています。
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データインフラストラクチャ: 分散型データストレージとクラウドサービスを提供し、データの安全性とアクセス制御を強化します。
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相互運用性: 異なるプラットフォームやサービス間でのデータの流通と利用を容易にするための標準化されたインターフェースとプロトコル。
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データ主権: ユーザーが自らのデータに関する完全な制御を保持し、データの安全性とプライバシーを保護します。
これらの機能により、データ主権とセキュリティが確保され、企業間のデータ交換が促進されます。
6.4. Gaia-Xの業務対象
Gaia-Xは、主にデータインフラストラクチャとデータ主権に関連する業務に注力しています。これには、データの安全な保存とアクセス、データの相互運用性、ユーザーのデータ管理と制御が含まれます。Gaia-Xの機能は、データの安全性を高め、ユーザーが自らのデータに関してより良い制御を持つことを目的としています。
CEF(Connecting Europe Facility)の公式ホームページのURLは次のとおりです:
https://commission.europa.eu/
このサイトでは、CEFによる国境を越えたデジタル公共サービスの促進や、eID、eDelivery、eInvoicingなどの各種Building Blocksに関する詳細情報を提供しています。
Gaia-Xのより詳細な情報や最新の状況は、公式の
Gaia-X website
で確認することをお勧めします。
このプロジェクトの名前は、ギリシャ神話における地球の女神「ガイア」と、未知の可能性を象徴する「X」を組み合わせたものです。ガイアは生命、成長、豊かさを象徴し、Gaia-Xプロジェクトはデータインフラストラクチャの分野において、同様の成長と可能性を目指していることを示唆しています。Gaia-Xの目的は、データの主権、透明性、そして欧州全体のデジタルエコシステムの強化にあります。
6.5. CEFとGaia-Xの業務対象と提供機能
CEFとGaia-Xは、それぞれ異なる業務領域に焦点を当て、特定の機能を提供しています。
両イニシアチブは、それぞれ異なる側面から欧州の統一市場を支えています。CEFはデジタルサービスの基盤構築に、Gaia-Xはデータの安全性と主権の確保に重点を置いています。それぞれが提供するBuilding
BlocksとService Functionsは、これらの目標を達成するために重要な役割を果たしています。
7. Catena-X:自動車産業に特化したアプローチ
Catena-XはGaia-Xの一部ではなく、それぞれ独立したイニシアチブです。ただし、Catena-XはGaia-Xのコンセプトや基準に沿ったアプローチを採用しており、Gaia-Xの目指すデータ主権や相互運用性の原則に則ったデータエコシステムとして機能しています。
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Gaia-X:
欧州全体のデータインフラストラクチャとデータ主権を強化することを目的としたイニシアチブです。Gaia-Xは、データの安全性、透明性、相互運用性を向上させるためのフレームワークや基準を提供しています。 -
Catena-X:
特に自動車産業のサプライチェーン最適化に焦点を当てたネットワークです。Catena-Xは、サプライチェーン内のデータ共有と透明性の向上を目指しており、Gaia-Xの原則に沿ったデータ管理やデータの相互運用性を実現しています。
Catena-Xは、Gaia-Xの目指すデータエコシステムの一例として見ることができ、Gaia-Xが提唱するデータインフラストラクチャのフレームワークの中で、特定の産業セクターに特化したアプリケーションを展開していると言えます。
Catena-Xは、自動車産業に特化したネットワークであり、サプライチェーン全体のデータ透明性と効率性の向上を目指しています。このイニシアチブは、データ共有、サプライチェーンの最適化、持続可能性の追求などに焦点を当てています。
8. Catena-X: 自動車産業における商取引の革新
Catena-Xは自動車産業を対象としたデータエコシステムであり、サプライチェーン全体のデータ透明性と効率性の向上を目指しています。このブログ記事では、Catena-Xを利用した商取引の提供方法と、その方法が抱える問題点について探ります。
8.1. Catena-Xによる商取引の提供方法
Catena-Xは、データの相互運用性とセキュリティを重視しています。企業はCatena-XのData Space
Connectorを利用して、EDIメッセージの送受信を行います。このプロセスは以下のように進行します:
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Data Space Connectorの設定: Catena-XのData Space Connectorを設定し、企業間でのデータ共有環境を構築します。
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データフォーマットの準備: EDIメッセージのデータフォーマットをCatena-Xのデータモデルに適合させます。
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メッセージの送受信: Catena-Xを介して、注文書、請求書、出荷通知などのメッセージを送受信します。
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監視と管理: メッセージの送受信を監視し、エラーの検出やデータ品質の確保を行います。
8.2. 抱える問題点
Catena-Xを利用した商取引は、以下のような問題点を抱えています:
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取引相手のID判定の問題: Catena-Xでは、取引相手のIDを判定するための標準化されたKYCプロセスが欠如しています。
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IDの真正性の不確かさ: Data Space
Connector自体がIDの真正性を直接保証するわけではありません。これにより、取引の安全性が損なわれるリスクがあります。 -
データセキュリティの課題:
メッセージの安全な送受信を保証するためのセキュリティ措置は、各企業の責任であり、Catena-Xのシステムが全てをカバーするわけではありません。
8.3. 結論
Catena-Xは自動車産業におけるデータ共有と商取引の効率化に大きな可能性を持っていますが、取引の安全性と信頼性を確保するためには、取引相手の確認とデータセキュリティの強化が必要です。企業は、Catena-Xの利用にあたって、これらの課題に対する適切な対応策を講じることが重要です。
9. 参考:eIDASとは

eIDASとは何ですか?
eIDAS は、Electronic Identification, Authentication and Trust Services の略です。 eIDAS
規制は、ヨーロッパの国に関係なく、企業間の電子的なやり取りがより安全、より速く、より効率的であることを保証するためのフレームワークを確立しました。これは、電子識別 (eID) とトラスト
サービスのための単一のフレームワークを作成した欧州規制です。 により、欧州連合全体でサービスをより簡単に提供できるようになります。eIDAS は、EU 加盟 27 か国にわたる相互運用性を促進し、各国が互いの通知された電子識別スキームを相互に認識できるようにしました。
また、規制の要件に準拠するサービスプロバイダーが提供する信託サービスが法的手続きの証拠として受け入れられることも保証されます。eIDAS 規制により、企業の取引のセキュリティ レベルが向上し、次のような他の多くのメリットがもたらされます。
他の企業、顧客、行政機関との電子取引における管理負担が軽減されます。
より効率的なビジネスプロセス。
コストの大幅な削減と利益の増加。
電子取引の安全性が向上し、消費者の信頼が高まり、潜在的な消費者層が拡大します。
eIDASとビジネス
電子 ID および信頼サービスをビジネスに導入すると、企業に一連のメリットがもたらされます。これらの利点は、次の 3 つの主要な領域に分類できます。
1.ユーザー エクスペリエンスの向上:
サービスと製品のスムーズな提供を保証します。顧客の信頼を獲得することはあらゆるビジネスにとって不可欠であり、顧客との関係構築に注力することで顧客満足度の向上に貢献します。2.セキュリティと責任の強化:
eIDAS 規制により、安全なソリューションと法的確実性により、当事者間の保証が強化されます。3.効率の向上:
製品、サービス、サポートの品質を維持しながら、プロセス サイクルの短縮、大規模な自動化、タスクの実行の簡素化と高速化、全体的なコストの削減を実現します。企業の大小を問わず、企業間取引と企業間取引の両方で eIDAS ソリューションを使用できます。 eIDAS は、企業に顧客や他の企業の身元確認を強化する機会を提供します。
これは、アルコールなどの制限商品を、美術品の販売や多額の送金などの高額取引で、取引する場合に特に役立ちます。また、他の EU
諸国の顧客や企業の信頼できる識別情報を提供して、企業が顧客ベースを拡大することもできます。eIDAS ソリューションは、企業が国境を越えた取引を行うのにも役立ちます。 eIDAS 規制に基づき、すべての EU 諸国は欧州委員会に通知された外国の eID
スキームを承認する必要があり、多くの国がすでにこれを導入する過程にあります。加盟国は、各国の eID
システムに通知することもできますが、これらのシステムを民間部門に開放しないことを選択することもできますが、そうすることが奨励されています。eID システムがあなたの国で通知されているかどうかを確認してください。
eIDAS 規制に基づくトラスト サービスもビジネスをサポートします。
電子署名 (eSignature):
文書またはデータセットの内容に対する個人の同意を電子形式で表現したもの。適格な電子署名には、手書きの署名と同じ法的効果があります。電子印鑑 (eSeal):
従来のビジネス スタンプと機能は似ています。電子文書に適用して、文書の出所と完全性を保証できます。*電子タイムスタンプ (eTimestamp):
注文書などの電子文書を特定の時刻にリンクし、その時点で文書が存在していたという証拠を提供します。ウェブサイト認証証明書 (WAC):
ウェブサイトが信頼できるものであることを顧客に証明する電子証明書。 Web サイトが証明書の発行対象者にリンクされていることを確認します。データ フィッシングの回避にも役立ちます。電子書留サービス (eDeliver):
ユーザーがデータを電子的に送信できるようにします。これは文書の送信と配達の証拠を提供し、紛失、盗難、損傷、または不正な変更のリスクから会社を保護します。民間部門は、専門サービス部門や金融サービス部門での電子署名の使用など、さまざまな部門で電子署名を活用し始めています。
金融サービス部門
金融サービス部門は、国境を越えて重要なビジネスチャンスとサービスの向上を可能にするため、eID と信託サービスの潜在的な最大の受益者の 1 つです。
顧客からのオンライン サービスに対する需要の増加に適応し、より厳しいコンプライアンス義務に対処するために、金融サービス部門における取引の識別、認証、保護は高度にデジタル化されています。
eID とトラスト サービスにより、企業は「Know Your Customer」などのオンボーディングの機会を活用できるようになります。 Know Your Customer は、クライアント
(または潜在的なクライアント) の身元を特定し検証するプロセスです。 これは、マネーロンダリング活動など、ビジネス関係の潜在的なリスクを評価するために企業によって実施されます。 通知された eID などの
eIDAS ソリューションのおかげで、このプロセスはほぼ完全にオンラインで実行できます。
これらのプロセスをデジタル化することで、企業は業務の最適化ではなく、顧客との関係構築に重点を置くことができるようになります。金融サービス分野における eID および信託サービスの使用例は次のとおりです。
次のためのeID
顧客の身元と顧客確認およびマネーロンダリング防止要件への準拠の信頼できる検証
リモートで信頼できる識別と口座へのアクセスを使用して、他国の顧客との新しい銀行口座や金融サービス口座の開設を容易にします。
クライアントとの金融サービス契約にリモートで署名するための電子署名
契約書などの重要書類を迅速かつ安全に交換するための電子書留サービス
インフォグラフィック: 金融サービス分野における eID
と信託サービス (pdf)
10. 利用者のKYCとGaia-X Association AISBLの役割
Gaia-Xは、ヨーロッパを中心としたデータインフラストラクチャプロジェクトで、データの主権、透明性、セキュリティを重視しています。ここでは、Gaia-X内での利用者のKYCに関連するGaia-X
Association AISBLの役割と、その確認内容および確認の仕組みについて解説します。
10.1. Gaia-X Association AISBLの役割
Gaia-X Association AISBLは、Gaia-Xプロジェクトの運営と管理を行う国際非営利協会です。KYCプロセスにおいては、以下のような役割を担います。
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トラストフレームワークの策定: 信頼できるエコシステムを構築するための基準やガイドラインを設定します。
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コンプライアンスの確認: 参加者がトラストフレームワークに準拠しているかを確認します。
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認証情報の管理: 参加者の身元を確認し、必要な認証情報を発行・管理します。
10.2. KYCプロセスの内容
Gaia-XにおけるKYCプロセスは、以下の内容を含んでいます。
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参加者の身元確認: 参加者が提出した情報の真正性を確認します。
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ビジネスの合法性: 参加者が行う事業の合法性を検証します。
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データ取り扱いの確認: 参加者がデータ保護基準に準拠しているかをチェックします。
10.3. 確認の仕組み
KYCプロセスの実施には、以下のような仕組みが用いられます。
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デジタル認証: 公開鍵基盤(PKI)などの暗号技術を利用して参加者の身元を確認します。
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自己申告情報の検証: 参加者が提供する自己紹介情報を検証します。
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監査とレビュー: 定期的な監査やレビューを通じて、参加者のコンプライアンスを確認します。
10.4. まとめ
Gaia-XプロジェクトにおけるKYCは、安全かつ信頼性の高いデータ共有エコシステムを構築するための重要な要素です。Gaia-X Association
AISBLは、トラストフレームワークの策定やコンプライアンスの確認などを通じて、このプロセスの実施を支援しています。
Nobuyuki SAMBUICHI
ISO/TC295 Audit data services
Co-project leader, AWI 21926 Semantic data model for audit data services
Convener, SG1 Semantic model
Liason pepresentative, XBRL International Inc.
Head of Delegate, JISC
Advisor at XBRL Japan
eIDAS 規制は、ヨーロッパの国に関係なく、企業間の電子的なやり取りがより安全、より速く、より効率的であることを保証するためのフレームワークを確立しました。これは、電子識別 (eID) とトラスト
サービスのための単一のフレームワークを作成した欧州規制です。 により、欧州連合全体でサービスをより簡単に提供できるようになります。
Facility)は、欧州連合(EU)の主要な資金調達機構の一つであり、トランスヨーロッパネットワーク(TEN)プロジェクトを支援するために設立されました。この施設は、エネルギー、交通、デジタルインフラの分野における欧州全体のネットワーク開発を促進することを目的としています。特にデジタルセクターでは、CEFはeID、eSignature、eDelivery、eInvoiceなどのデジタルサービスインフラ(DSI)の開発をサポートしています。これらのサービスは、eIDAS規則に基づき、EU加盟国間でのデジタルサービスの相互運用性と信頼性を高めるために重要な役割を果たしています。CEFに関するさらなる情報は、欧州委員会のウェブサイト
(https://ec.europa.eu/inea/en/connecting-europe-facility) で入手できます。
Customer)の日本語訳は、「顧客確認」となります。KYCは、特に金融機関や企業が、ビジネスを行う際に顧客の身元や背景を確認するプロセスを指します。このプロセスは、マネーロンダリングや詐欺などの不正行為を防ぐために重要とされています。KYCでは、顧客の身分証明書の確認、住所の確認、ビジネス活動の性質や目的の理解などが含まれることが一般的です。